性犯罪で逮捕されたら

 ある日突然,身近な家族が逮捕されてしまったら,「今後どうなってしまうのか」などと様々な心配が生ずることと思います。逮捕されるような犯罪に心当たりのある方は,「逮捕されたら会社や学校はどうなるのか」などの不安も拭えないかと思います。

 今回は,逮捕の流れや,逮捕時に弁護士のできること等を代表弁護士・中村勉が解説します。

そもそも逮捕を事前に把握できるか

 逮捕される可能性がある場合には,例えば警察に逮捕するか尋ねても,教えてもらえません。弁護士でも同じです。
 ただ,そもそも逮捕の可能性が全くない場合には,「逮捕はしません」と明示に伝達してくれる場合や,「今後の警察からの電話には必ず出てください」等と言われることもあります。
 しかし,多くの場合,逮捕するかどうかは教えてくれません。逮捕は,非常に機密性の高い捜査情報であり,「逮捕する予定ですよ」等とうっかり漏らしてしまうと,被疑者の逃亡や証拠隠滅行為を誘発・助長してしまいかねないからです。

警察から電話連絡や出頭要請通知がある場合

 警察が逮捕状を持参の上自宅や勤務先等へ赴くのではなく,とりあえず,自宅待機を命じ,被疑者の出頭を待って,出頭したら逮捕することもあります。覚せい剤事件や大麻事件の所持事犯ではこの例が多いです。
 この場合,警察が被疑者を一定程度信用している場合には,例えば急務(冠婚葬祭など)のために当日の出頭が困難な時には,翌日以降に出頭日を調整してくれる場合があります。

 下記のような場合には,逮捕される可能性が高いといえます。

警察車両が自宅や勤務先に待機している場合

 警察が既に逮捕状を請求中である場合などは,被疑者の所在確認をし,また,被疑者が逃亡しないか監視する目的等で,自宅や勤務先の周辺等に待機する場合があります。いわゆる張込みです。

逮捕されると

 逮捕とは,被疑者の身体を強制的に拘束し,留置施設に連行し,そこに留め置くことです。逮捕後,72時間以内に身柄を解放されない場合,その後10日間勾留されてしまうケースが多く,その間,会社や学校等は休まざるを得ません。

 逮捕後の流れは,フローチャートにすると,以下のような流れになります。

  • 警察による身柄拘束
  • 検察庁への送致
  • 勾留決定
  • 起訴,不起訴または処分留保釈放(場合により再逮捕等)
  • 起訴後勾留
  • 刑事裁判

 以下,順に見ていきます。

警察による身柄拘束(48時間以内)

 まず逮捕されると,警察により取調べ等を受け,留置施設に留置されます。
 この拘束時間は48時間以内と定められており,警察はその間に検察庁へ送致するか釈放するかを決定しなければなりません。

検察庁への送致

 検察庁へ送致されると,検察官は勾留を求めるか否かの判断を行います。
 この判断は,逮捕後72時間以内(送致後24時間以内)に行わなければなりません。

勾留決定

 検察官により勾留が請求され,裁判所により勾留が決定されると,まずは10日間の勾留期間が設定されます。事案により,さらに10日間の勾留延長等がされる場合もあります。

起訴,不起訴または処分保留釈放

 勾留期間を経た後,検察官は,当該事案を起訴するか起訴しない(=不起訴とする)かを決定します。
 事案によっては,起訴不起訴の処分を留保した形で一旦釈放されることもあります。なお,他にも逮捕されるべき罪がある場合には,これらの決定等の後に再逮捕される可能性があります。

起訴後勾留

 起訴されると,刑事裁判の間,さらに勾留されることになります。
 この間に身柄解放するためには,保釈請求をする必要があります。

刑事裁判

 通常は,起訴後約6週間程度で,刑事裁判が始まります。
 刑事裁判の場では,被告人が有罪か無罪か,有罪であるならどのような刑に処するべきかが判断されます。

ご家族が逮捕されたら直ぐに弁護士に連絡すべき4つの理由

 弁護士であれば,以下のような対応が可能です。

  • 早期接見が可能
  • 早期の取調べアドバイスが可能
  • 早期の身柄解放への着手が可能
  • 家族への連絡が可能

 逮捕から勾留までの72時間については,弁護士以外の接見面会は基本的にはできません。
 これに対し,弁護士であれば,この間に本人に会い,話を聞き,取調べへのアドバイスを行い,被疑者と今後の方針を話し合うことができます。また,ご家族からの伝言を伝えることもできます。早期に接見し,ご家族との連絡の橋渡しになることで,会うことのできない家族に無事を伝えたり,仕事関係などの必要な連絡を伝えることも可能となるのです。
 特に,逮捕後の72時間や,その後の勾留期間は,会社や学校等を休まざるを得ません。
 場合によっては,会社を解雇されたり,退学処分を受けてしまう可能性もあるので,適切な対応が必要となります。
 家族等一般の方々の場合,面会できたとしても,平日1日1組まで,1回15分程度など,多くの制限があります。また,例えば,木曜日に逮捕された場合,金曜日は送検や勾留手続で終日面会できず,土日は面会できないので,月曜日になるのを待つしかありません。
 これに対し,弁護士の接見には,時間に制限がないため,夜間や土日でも面会ができます。
 このような丁寧な聞き取りを通じて,早期の身柄解放を目指し,逮捕された方に生ずる不利益を最小限に留めるべく尽力するのが弁護士の役割です。
 このように,できる限りお早めに弁護士に相談することをお勧めいたします。逮捕直後は情報に乏しく,そもそもなぜ逮捕されてしまったのか,詳しい事件の内容を警察はなかなか教えてくれません。事件の内容が分からなければ,今後どの程度身柄を拘束されてしまうのか,身柄拘束を短縮できるのか等の見通しも立たなくなってしまいます。
 逮捕直後から接見することが唯一可能な弁護士が,早期に接見することで,これらの情報を早期に取得し,ご家族の方にも共有することが可能となります。

逮捕されたときの弁護士の選び方のポイント

 選び方のポイントは,自分のニーズに合った種類の弁護士に依頼すべきといえます。
 とりあえず無料で一回弁護士と話してみたいという場合は当番弁護士を,できるだけ費用を抑えて弁護士に依頼したい場合は国選弁護士を選ぶのが良いでしょう。
 これに対して,弁護士にはきめ細やかなサポートをお願いしたい,自分の希望するタイミングで接見に来て取調べのアドバイスが欲しい,家族とのコミュニケーションも密にお願いしたい,早期の身柄解放や最善の弁護活動をお願いしたい,等の場合には,刑事事件に強い私選弁護士を選ぶのが適しているといえるでしょう。
 逮捕後は,情報の少なさに,自分は何をしたらいいのか分からず,パニックに陥ってしまう場合もあります。まずは,どのような事情でご家族が逮捕されてしまったのか,今後の流れがどうなるのか等,正確な事実を知るためにも,まずは刑事事件の実績が豊富な弁護士へお早めにご相談されることが望ましいといえます。

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